空飛びたこ

アーカイブ - 記録 詞 書き散らし

魔法の竜

 

作文をしたい+アーカイブスペースがほしいがエスエヌエス不得意、ゆえブログを開設したので、こちらに歌詞や雑感や各種イメージなどを保存する。以下、テスト用に小文を書き散らし。

 

 

 

 先日、仲良くなりはじめた人からいちばん好きな賢治の小説を尋ねられ、わたしは「銀河鉄道の夜」と答えたのだがその実正直なところは「楢ノ木大学士の野宿」であった(こういう場合いつも2,3番目くらいに好きなものを教えてしまう)。この小説は全部がいいけど、白亜紀で雷竜に食われるというのがとくにおかしい。そういえば、ちょっと前にちょうど久慈で見つかった竜脚類の歯化石から彼らの植物食が証明されたみたい。岩手県は魅力的なところだ。

 竜みたいな動物が好きである。よって竜脚類、およびそれに類する怪物が出てくる物語を贔屓しがちだ。ブラッドベリ「霧笛」で仲間の声を求めるロンサムベイの恐竜にはいつも胸が苦しくなる。「電脳コイル」という世にもすばらしいアニメでは13話の「最後の首長竜」を擦り切れるほど観た。宮崎夏次系さん「飛んだ車」のネッシー池澤夏樹さん「ヤー・チャイカ」のディプロドクスのおかげで、むかしからなんども首長竜とか竜脚の頭や背中に乗る夢を見る。幼い頃『地底旅行』を読んだせいでいつも足下にプレシオサウルスがいる気がする。映画「ジュラシック・パーク」ではじめて生きたブラキオサウルス、だったかな、を目にするシーンを観たときは、とても言葉にならなかった。鏡花は「夜叉ヶ池」がいいしハクは竜の姿のほうがいい。

 

 竜。メソポタミア神話によると、天と地はそれぞれ英雄神の切り裂いた竜(あるいは人型の水神)の体からできているということである。創世記の「地は形なく、むなしく、闇が淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた」の「淵」は、なんと「ティアマト」の語と根を同じくするらしい。これは教授に聞いたことだが(わたしのハンドルネームは彼のつくった本から頂戴した)、インド神話ではこの世界の最下層にアナンタという千の顔を持つ蛇神がいて、世界が始まる前は水の上でずっとヴィシュヌと寝ていたという。ユグドラシルの下のほうの氷の世界で死んだ人の魂を食べている北欧のニーズヘッグも心惹かれる。ところでいま浮かんだ謎なのだが、爬虫類的な架空の動物が竜だというなら、それが揃いも揃って水辺の神様である所以はなんなのだろう。もう答えは出ているのかな。あ、ワニ?

 

 そんなことよりもっと謎なのは、つねに権力のものであった歴史のある「竜」的なけものが、近代以降のフィクションではたいてい寂寥を強調して描かれることだ。ブラッドベリにしてもなんにしても、彼/彼女らが群れている状態で描写されることはないような。彼/彼女らに好きなものを聞いてくれたり一緒に怖がられてくれたりする友だちはあまりおらず、できてもすぐにいなくなる。強きはむなしきか。

 子どもの頃、ピーター・ポール&マリーの「Puff, The Magic Dragon」が和訳されたものを聴いていたのだったか歌わされたのだったか、とにかくあの歌のマジックドラゴンの顛末も悲痛である。海賊も恐れたほどの巨体のパフは少年に置いていかれていまだに入江にひとりでいるのだろうか。ドラゴンって不死のことが多いし、それでなくとも地球の生きものは体が大きいほど寿命も長いものだから、おそらくパフは想像を絶するほど途方もない時間を生きたんだろうけど、はたして何年か前に人間に見つかった400歳の鮫とどっちが年上だろう。いい勝負なんじゃないか。魔法の竜が暮らしてた低く秋の霧、たなびく入江、思い出してみると翻訳も美的。

 強かったり辛かったり怖かったり悲しかったり、男性的といえたり女性的といえたり、竜は千姿万態で謎が多い。

 

 

追記

原曲だとパフは不老不死なんだって。ええー。